税務調査
税務調査ではどのようなことが行われるか
1 相続人への質問
税務調査は、被相続人の自宅や相続人の自宅で行われることが多いです。
税務調査では、相続人に対し、様々な質問が行われます。
ここでは、代表的な質問を挙げたいと思います。
① 被相続人の職業歴
被相続人の職業歴について質問されることがあります。
たとえば、過去に勤務していた会社や、過去に行っていた事業について質問されることがあります。
過去に勤務していた会社が確認できた場合は、その会社から受け取った退職金がどうなったかの確認がなされることがあり、その後、その退職金がどうなったかの確認がなされることがあります。
その退職金が形を変えて残っている場合、たとえば、相続人名義の預金等の資産に形を変えて残っている場合は、その資産についても課税対象とされるべきであるとの判断がなされることがあります。
また、過去に行っていた事業が確認できた場合は、被相続人がその事業の株式や持分を持っていないかの確認がなされることがあります。
株式や持分の存在が確認できた場合は、これらについても課税対象とされるべきであるとの判断がなされることがあります。
② 被相続人の趣味
被相続人の趣味について質問がなされることがあります。
たとえば、被相続人の趣味がゴルフであった場合は、資産性のあるゴルフ用品が存在しないかどうか、どこかのゴルフ場のゴルフ会員権を持っていないかどうかの確認がなされることがあります。
他にも、被相続人の趣味がヨットや車の場合は、資産価値の高いヨットや車が存在しないかの確認がなされることがあります。
過去には、旅行が趣味であるとの回答を行ったところ、旅行に向けて積立がなされていることの確認がなされ、積立金に対する追加課税がなされた例もあります。
これらの調査により、追加で課税対象となる資産の存在が明らかになった場合には、追加の納税が必要になってきます。
③ 相続人の収入、資産
相続人の収入、資産についても確認がなされることがあります。
相続人の収入と比較し、相続人が有している資産が多額である場合は、相続人が有している資産がもともとは被相続人が形成した資産なのではないかについて、確認がなされることが多いです。
もともとは被相続人が形成した資産であることが確認できた場合には、その資産は、実質的には被相続人の財産(名義預金、名義株等)として、課税対象とされることがあります。
2 実家の確認
税務調査では、実家の確認がなされることが多いです。
よく、実家の天井裏や床下の確認がなされ、タンス預金や金の延べ棒が発見された場合には、追徴課税がされるといった話がなされることがあります。
そのような例もないわけではないと思いますが、現実には、以下のとおり、地道な確認作業がなされることが多いです。
① 被相続人が使っていた金庫の確認
被相続人が使っていた金庫の確認がなされることがあります。
金庫の中から、現金や貴重品類が見つかった場合には、これらに対する追加課税がなされることがあります。
他には、金庫内に保管されている、財産についての重要書類を確認し、申告漏れとなっている財産がないかについての確認がなされることがあります。
② 通帳、証書を置いている場所の確認
通帳、証書を置いている場所を確認し、申告漏れとなっている財産が判明した場合には、追加課税がなされることとなります。
申告対象となっていなかった被相続人名義の預金の通帳、証書が存在する場合には、申告漏れが存在することとなり、追加で納税する必要が生じてしまいます。
他には、通帳、証書と一緒に、被相続人が知人に貸し付けていた貸金についての証書が発見された、これが課税対象とされた例があります。
別の事例では、被相続人が作成したメモが発見され、そのメモに、被相続人が親族の名義で貯蓄していた預金の一覧が記載されていたことがあります。
こうした預金は、被相続人が形成し、なおかつ、被相続人が管理していた預金であると判断されるため、実質的には被相続人の預金(名義預金)として、追加課税の対象とされる可能性があります。
税務調査の流れ
1 日程の確定
税務調査がなされることとなった場合には、電話や手紙での連絡がなされます。
税務署からは、何月何日に調査をしますので、どこへ何時に来てほしいという話がなされます。
どうしても日程が合わない場合は、代替日で調整することも可能ではありますが、その場合も、近い日程で調整を求められることが多いです。
調査の場所については、自宅や事業所が指定されます。
このとき、合わせて、税務署からは、調査の対象となる税目、調査の対象となる事項等が告げられます。
もっとも、事前に調査の対象となる事項等を事前に具体的に告げてしまうと、証拠隠しがなされるおそれがあることから、税務署は、この段階では、抽象的な表現でしか、調査の対象となる事項等は告げません。
※本記事では、調査の主体を税務署と記載しますが、多額の課税漏れの可能性がある場合、複雑な問題がある場合等には、税務署ではなく、国税庁が調査を行うこともあります。
2 事前の準備
税務調査の当日までに、税務調査に向けた準備等を行います。
まず、具体的な調査の対象になる事項が何であるのか、洗い出しを行います。
この段階で、調査の対象になる事項が具体的に特定できた場合は、自主的に修正申告を行うという選択肢もあります。
自主的に修正申告を行えば、税務調査後に修正申告を行う場合と比較し、ペナルティとして科される加算税が5%程軽減されます。
また、調査の対象になる事項が具体的に特定できないとしても、おおむねこのあたりが問題になりそうであるという特定ができる場合は、関係する資料を整理しておくと、当日の調査がスムーズになるでしょう。
ここで注意していただきたいのは、関係する資料を積極的に廃棄するようなことは、避けるべきであるということです。
税務署は、この段階で、取引先や金融機関等から、調査の対象となる事項についての情報を入手していることが多いです。
このため、関係する資料の廃棄をしたとしても、結局、他で得られた情報から、追加課税されることが想定されますので、追加課税を避けることができないばかりか、関係する資料の廃棄が発覚した場合には、重加算税の対象とされたり、刑罰の対象とされたりする可能性もあります。
関連する資料を積極的に廃棄する行為は、さらに事態を悪化させる可能性がありますので、避けるべきでしょう。
3 税務調査の当日
税務調査の当日には、税務署の職員が訪れます。
多くの場合は、2名の職員が訪れます。
税務署からは、様々な質問がなされます。
これらの質問に対し、事実に基づいて回答する必要があります。
虚偽の回答を行うことは避けるべきです。
先程述べたように、税務署は、すでに調査の対象になる事項についての情報を得ていることが多いです。
こうした情報に基づいて虚偽が露呈してしまうと、追加課税がなされるだけでなく、重加算税等のペナルティが科される可能性もあります。
また、税務署からは、関係する資料の開示を求められます。
こうした求めに応じて、資料の開示を行う必要があります。
税務調査の過程で、ご自身が把握している事項を、税務署が準備した書式に記入することを求められることがあります。
また、税務署の質問に対して、ご自身が回答した内容をまとめた、質問応答記録書への署名を求められることがあります。
これらの書類を作成するときは、税務署が何らかの追加課税をなすべきであると考えている可能性が高いです。
こうした状況下で、書面で誤った内容を書いてしまうと、ご自身が情報隠しをしようとしているという印象を抱かれかねず、重加算税を課税すべきであるとの判断がなされかねません。
作成する書類については、細心の注意をもって、正確に作成する必要があります。
4 税務調査後の対応
税務調査が終了すると、後日、税務署から、調査結果の共有がなされます。
この段階で、税務署からは、具体的にどのような問題があり、どのような追加課税がなされるべきかの話がなされます。
こうした調査結果を踏まえて、修正申告、追加納付を行うかどうかを検討します。
調査結果を受け入れる場合は、修正申告、追加納付を行うこととなります。
他方、調査結果に異議がある場合は、その旨を税務署に対して告げます。
これに対して、税務署があくまでも追加納付が妥当であると判断する場合は、税務署により更正処分がなされ、税務署の判断で追加課税がなされることとなります。