「相続税の制度」に関するお役立ち情報
負担付死因贈与契約と相続税
1 死因贈与契約とは
死因贈与契約は、贈与者と受贈者との間で、贈与者が死亡した際に、財産を贈与するとの合意を行うことを言います。
すべての財産を死因贈与するとの合意を行うこともできますし、特定の財産や財産の何分の何を死因贈与するとの合意を行うこともできます。
自筆証書遺言を作成する場合と比較すると、受贈者との間で生前に合意をしておく必要があること、相続後に手続が煩雑になる傾向があること等のデメリットがあります。
他方、自筆証書遺言のように方式が定められていないため、書面による場合であっても、全文を自書せず、パソコン打ちして作成することもできる等のメリットがあります。
このため、死因贈与契約は、自筆証書遺言と比較して、広く用いられないものの、一定の場合には有効に用いることができる方法であると言うことができます。
2 負担付死因贈与契約とは
負担付死因贈与契約は、受贈者に対して財産を死因贈与するのと引き換えに、受贈者に一定の負担や義務を負わせる契約のことを言います。
贈与者が亡くなると、受贈者は、財産を取得する権利を得るのと同時に、一定の負担や義務を負うこととなります。
負担や義務の具体的な内容としては、様々なものがあります。
代表的なものは、受贈者にアパートを取得させるのと引き換えに、受贈者にアパートローンを返済する義務を負わせるものになります。
3 負担付死因贈与契約と相続税
負担付死因贈与契約が成立した場合、受贈者は、どのような税金を負担することとなるのでしょうか?
まず、受贈者は、財産の相続税評価額と負担との差額について、相続税を納める必要があります。
アパートの例ですと、アパートの相続税評価額と相続時点の債務の残額との差額について、相続税を納める必要があるということとなります。
なお、負担付贈与契約の場合は、アパートの時価と債務の残額との差額について、贈与税を納めることとなりますが、負担付死因贈与契約の場合は、先述のとおり、アパートの相続税評価額と債務の残額との差額について、相続税を納めることとなり、評価方法が異なっていますので、注意が必要です。
また、相続税とは別に、負担や義務の評価額について、譲渡所得税が課税されることとなります。
先の例ですと、相続時点の債務の残額について、譲渡所得税の課税がなされることとなります。
この譲渡所得については、贈与者に課税されるものと扱われますので、準確定申告が必要であることとなります。
なお、譲渡所得税の計算上は、アパートの取得費(ただし、建物については減価償却後の金額)を差し引くことができますので、取得費を差し引くことにより、譲渡所得税が軽減できることもあります。