「相続税の制度」に関するお役立ち情報
相続税の連帯納付義務
1 相続税の連帯納付義務とは
相続税は、各自が相続等により取得した財産額に応じて課税されることとなります。
ところが、相続税の納付期限までに、自分に課税される相続税を納付したとしても、他に相続税を滞納している人がいると、本来その人が負担すべき相続税を納付しなければならなくなる可能性があります。
これは、相続税には、連帯納付義務があるものとされているためです。
同じ被相続人から相続等により財産を取得したすべての人は、互いに、連帯して相続税を納付する義務を負っています。
財産を取得したすべての人が連帯納付義務を負いますので、相続人だけでなく、遺言により財産を取得した人(受遺者)や死亡保険金の受取人についても、互いに連帯納付義務を負うこととなります。
このため、全員が相続税を納付しない限り、他の人が滞納している相続税を納付しなければならなくなる可能性があるということになります。
なお、法律上は、連帯納付義務者に対して、後述する「納付通知書」が発せられることなく申告期限から5年が経過すれば、連帯納付義務は免除されることとなっています。
裏返せば、申告期限から5年間は、連帯納付義務者に対する納付通知書が発せられ、他の人が滞納している相続税を納付しなければならなくなる可能性があるということになります。
このように、連帯納付義務が発生する可能性がある期間は、長期間に及びます。
2 連帯納付義務の範囲
連帯納付義務者は、他の人が滞納している相続税を納付する必要があります。
通常の連帯債務と同様、それぞれの相続人等が、滞納している相続税の全額について、納付する義務を負うこととなります。
ただし、連帯納付義務は、相続等によって受けた利益の価額に相当する金額が限度額になるとされています。
例えば、2000万円の相続財産を取得し、自分に課税された500万円の相続税を納付した場合だと、差額である1500万円を限度として、連帯納付義務を負うこととなります。
もっとも、自分が取得した財産に不動産が含まれる場合は、不動産の評価額も、相続等によって受けた利益に含まれます。
相続税は、基本的には金銭で納付しなければならないため、不動産を多く相続した場合には、連帯納付のための原資が調達できない事態が生じるおそれもあります。
3 利子税と延滞税
さらに、連帯納付義務者は、他の人が滞納している相続税だけではなく、利子税と延滞税も納付しなければなりません。
利子税と延滞税は、相続税の納付期限から、相続税の全額が納付されるまでの期間について課税されます。
利子税は、納付基準日の期間について課税されます。
納付基準日は、納付通知書(後述)を発してから2か月後か、督促状(後述)を発した日のどちらか早い日になります。
納付基準日までに連帯納付がされれば、利子税のみの課税となります。
しかし、納付基準日までに連帯納付がされなければ、さらに、より高税率の延滞税が課税されることとなります。
延滞税は、納付基準日から連帯納付がなされるまでの期間について課税されます。
利子税や延滞税の税率は年によって異なり、どちらも国税庁のホームページで確認することができます。
参考リンク:国税庁・延滞税の割合
4 連帯納付義務者への請求の流れ
連帯納付義務者への請求がなされる場合は、次のような流れで進んでいきます。
それぞれの段階で、特定の名称の書類が発せられることとなっていますので、どのような名称の書類が届いたかを確認すれば、どの段階に至っているかを確認することが可能です。
① 本来の納税義務者へ督促状が発せられます。
② ①から1か月が経過しても相続税の全額が納付されない場合は、連帯納付義務者に対して、「完納されていない旨等のお知らせ」という名称の書類が発せられます。
③ その後も納付がなされなければ、連帯納付義務者に対して、納付通知書が発せられます。
この納付通知書には、「相続税の連帯納付義務のお知らせ」という名称が付されています。
④ ③の納付通知書が発せられてから2か月が経過しても相続税の全額が納付されなければ、連帯納付者に対して、督促状が発せられます。
督促状が発せられた日から10日が経過すると、連帯納付義務者の財産に対する滞納処分(差押え)がなされる可能性があります。